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どうなる?わが国の軽減税率



わが国では2017年4月に消費税が10%に引き上げられることがほぼ決まりました。
消費税を増税するにしても、所得の低い人たちの負担を軽減するために、食料品などに軽減税率を設けるべきだとして現在検討されています。
軽減税率については、以前のブログ「消費税の軽減税率」にて触れましたが、今回はより掘り下げた内容で消費税の軽減税率について考えていきたいと思います。

軽減税率?

軽減税率は、ヨーロッパなどで広く導入されていますが、食品や医療品などの生活必需品について標準税率よりも低い税率を適用する制度です。
税率が何種類か複数になるため、複数税率とも言います。

たとえばドイツでは、日本の消費税にあたる付加価値税の標準税率は19%ですが、食品にかかる税率は7%です。
付加価値税発祥の国フランスでも、標準税率は19.6%ですが、食品は5.5%と1/3以下の税率です。
ほかにも多くの国で食料品に対する軽減税率が実施され、イギリスなどはゼロ税率を適用しています。
食品以外の特定品目に軽減税率を適用し、3段階の税率がある国もあります。

標準税率が10%以下で軽減税率を実施しているのはスイスくらいで、他の欧州諸国は20%前後の税率が多くなっています。
これはEU加盟諸国では「付加価値税の標準税率は15%以上とし、5%を超える1つか2つの軽減税率を持つことができる」という共通ルールがあるので、似通ったものになっているのです。
軽減税率の対象になっているのは食料品のほか、水道水・新聞・雑誌・書籍・医薬品・旅客輸送(鉄道やバス)などが多く、家庭用燃料や電力などを含める国もあります。

低所得者層ほど家計に重い

低所得層の負担軽減を行う目的は、いわゆる消費税の逆進性を改善するためです。
逆進性とは累進性の反対で、所得の低いものほど所得に対する税の負担が重いことをいいます。
所得税などの税は所得が多いほど税率が高い累進課税が普通です。
これは現代の税には応能負担原則という、所得の多い人ほど多くの税を負担することが公平だという考え方からきています。
消費税はこの原則に反する面があるのです。
もちろん消費税の負担は消費額に対しては比例するのですが、低所得者はぎりぎりの生活をしていますから、収入の多くを生活のための消費に使ってしまいます。
たとえば・・・

《世帯の収入が年300万円の家庭》
年250万円を消費したとすると、10%の消費税なら25万円の消費税を負担します。
これは収入全体の8%になります。

《世帯の収入が年2,000万円の家庭》
年1,000万円を消費すると100万円の消費税を負担します。
これは収入全体の5%にしかなりません。

つまり消費税の税率は同じでも、個々の家計にとっての負担割合は、所得が低いほど高くなる可能性が高いのです。
これが消費税に逆進性がある、と言われるゆえんです。
こうした現象は、消費税という税制の持つ性格上仕方のないことです。
そこで、少しでも低所得者層の負担を減らすために、食料品など生きていくうえでどうしても必要な消費について、特例として税率を引き下げようというのが軽減税率の考え方です。

欧州各国の軽減税率

参考:財務省HP

テイクアウトを店内で食べる人が続出

理念を見れば良い考え方に思えますが、これを実行しようとするといろいろやっかいな問題が出てきます。
まず最初に出てくるのが、何を軽減税率の対象とするかという線引きの問題です。
ヨーロッパなどの例では食品などが軽減の対象となる場合が多いようですが、では食品とは何か?ということを決めなければなりません。
米やパンなどの主食類、野菜や肉や魚を含めるというのは皆さん当然と思われるでしょうが、ではマグロのトロや松阪牛はどうでしょうか?
フォアグラやキャビアなどの高級食材も食品といえば食品ですが、買うのは高所得者層でしょう。
もうひとつ線引きの難しいのが、外食サービスとの区分です。現に海外では笑い話のようなことがいくつも起こっています。
ヨーロッパでは、食料品は軽減税率が適用され、レストランサービスは標準税率、という国が多くなっています。
そうすると、何が食料品で何がレストランサービスかが問題になってきます。
ハンバーガーショップはどうでしょう?
ドイツなどではテイクアウトするものは食料品で、その場で食べればレストランサービスという区別がされています。
すると標準税率の高い商品を購入したくない客は「テイクアウトで」と言ってハンバーガーを購入して、その場でさっさと食べてしまう、という自体が生じます。
これを防ぐためにイギリスでは、食料品かレストランサービスかという区別にホット・フード、つまり「温かいものが提供されたかどうか」を基準にしています。
お客さんのために温めて提供するようなハンバーガーは標準税率ですが、スーパーの惣菜は軽減税率となっています。
またドイツでは、ハンバーガーショップ側が、税率は異なっても、客に提供する税込価格をテイクアウトも店内も同一にしている例もあります。
これは小売価格をどうするかは小売業者の自由ですから問題はありません。文句がある客は買わなければいいというドイツらしい合理的な考え方のようです。

ドーナツ購入クラブやピザ裁判まで・・・

カナダでは、ドーナツなどの菓子類について、1回に5個以下しか買わない場合は飲食サービス(標準税率)で、6個以上は食料品(軽減税率)である、というように個数で区別をしています。
なぜでしょうか。これは5個以下ならその場で食べられる量だけれど、6個以上は多いので持ち帰って食べるだろう、という考え方です。
そこでカナダに生まれたのが即席「ドーナツ購入クラブ」です。
ドーナツ屋さんの前で見知らぬ者同士が声を掛け合い、購入数が6個以上になるのを待つのです。なんとも苦笑せずにはいられません。
他にも、軽減税率の適用される子供服の販売が子供の数に比べて異様に多い(小さいサイズの大人向けの服を子供服として販売している?)などなど例を挙げるときりがありません。
さらに軽減税率対象商品になるかならないかというのは、対象の事業者にとっては重要なことですので、海外では裁判になった例が多くあります。
宅配ピザチェーンのピザ屋が、できたての温度でピザを宅配すると広告を出して、保温装置を付けて販売したのに対し、イギリスの税務当局が「レストランサービスである」として標準税率を適用したのです。
これにチェーン側が反発、「温めて料理を出すレストランなどとは違う」として争いましたが、ピザチェーン側が負けました。
イギリスでは、消費者が食べるときに常温より温かければ飲食サービスという基準を徹底しています。

やっぱり高所得者が得?

いろいろな問題の起こりうる軽減税率ですが、さらにそもそもの問題であった逆進性はなくなりません。
低所得者対策とはいいながら、軽減税率の恩恵は高額所得者も受けるからです。
消費税は買う人で区別して課税するわけではありませんから、食品なども購入額は高所得者の方が多いわけで、とすると実際に恩恵を受ける額は高所得者層の方が多いのです。
これで低所得者に配慮した制度と言えるのだろうか?という疑問も生まれてきます。
他にも「税収が減る」「混乱を招く」などさまざまな課題もあります。
わが国でもたちまち導入が検討されている軽減税率ですが、将来の理想を見据えた議論をしっかり行ってほしいと思います。

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