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日本型軽減税率制度とその問題点



日本型軽減税率制度とは

平成29年4月より消費税率が10%へと引き上げられる予定です。
消費税率10%への引き上げの詳しい内容については、「消費税10%にはいつなるの?」をご覧ください。

消費税は、景気の影響をあまり受けずに安定した税収確保ができる利点がある一方で、法人税や所得税と違い所得に関係なく同じ税率が適用されるため、低所得者の負担感が重くなる逆進性の問題があります。
この逆進性の問題を解消する対策として、消費税率10%への引き上げと同時に軽減税率(詳しくは、「どうなる?わが国の軽減税率」)の導入が検討されています。
その軽減税率の導入に向け、9月8日に財務省が検討している「日本型軽減税率制度」の案が示されました。

この日本型軽減税率制度(案)では、軽減税率の対象は「酒類を除く飲食料品(外食を含む)」と、かなり広範囲の適用をする案が示されています。

また、具体的な方法としては、

  1. 軽減税率対象の商品購入時に、店頭で社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の個人番号カード(マイナンバーカード)を専用端末にかざす
  2. この商品購入時に、一旦は消費税10%を含めた金額を支払う
  3. 軽減税率との差にあたる2%相当額の「軽減ポイント」が、政府の「軽減ポイント蓄積センター」に記録される
  4. 消費者自身がインターネット等を通じて、平成29年1月利用開始予定の「マイナポータル」から還付申請をする
  5. 事前に登録した口座に還付される(最大年間4,000円程度)

という流れでの運用案が示されています。
これを見ると、「軽減税率制度」というよりは「還付制度」といった内容となっています。

また、対象者について所得制限は設定しないとしていますが、還付する上限金額は低所得者が1年間に消費する飲食料品の金額を参考に1人あたり年間4,000円程度とし、また子育て世帯に配慮して家族の合算申請を認め、軽減幅を広げる仕組みとなっているようです。

この「日本型軽減税率制度」については、すでに様々な方面から問題点が数多く指摘されています。
指摘されている主な問題点を、以下に示してみた。

日本型軽減税率制度の問題点

1.消費税の逆進性緩和の問題

この年間4,000円という還付金額の上限設定について、皆さんはどのように感じられるでしょうか?
あなたが1年間生活するうえで、飲食料品に対する支出額が22万円で収まりますか?

計算してみると、一人当たりの還付金が4,000円となる最低年間支出額は、10%の消費税込みで22万となる事が分かります。
詳しく書くと、

  • 1年間で税抜き20万円の飲食料品を購入
  • 消費税の10%である2万円を加えた22万円を一旦支払う
  • 消費税10%(2万円)のうち、軽減税率との差の2 %相当額である4,000円が消費者の手元に戻ってくる

となります。
つまり、この案のままであれば、税込み22万円までの支出は実質8%の消費税負担のままとなり、22万円を超えた分は消費税10%を負担することになるということです。
また、限度額は世帯で合算計算される為、例えば夫婦と子ども2人の家庭であれば、1万6000円(4000円×4人)が限度額となります。

還付金の上限金額少なくなればなるほど、消費金額が大きい高所得者への還付率が下がることになるので、多少は逆進性の問題の緩和に繋がるかもしれません。
しかし、これだけで逆進性の緩和に十分寄与していると言えないのではないでしょうか。

また、この4,000円という金額で、本当に国民の消費活動に寄与できるのか甚だ疑問です。

2.個人情報運用管理と流出問題

この案では、運用の第1段階で「マイナンバーカードを専用端末にかざす」というものがあります。

このマイナンバーカードの読み取り時に、購入データのみ暗号化し、その他の個人情報は読み取らないようにすると説明されてはいます。

また、仮にマイナンバー情報が流出したとしても、それで即座に年金や税金の情報が外に漏れるわけではありません。
それは、年金や税金といった情報は、データベースとしてそれぞれの機関(日本年金機構や税務署)が保管しており、その情報を引き出すのにマイナンバーを使うという形だからです。
つまり、マイナンバーが流出しても、各機関がしっかり管理・運用していれば、簡単には個人情報が流出するということはないという説明です。

しかし、実際に、年金の個人情報流出という大問題を起こしているわけで、きちんと管理・運用できるのか疑問が残りますし、信頼できるとは言い難い状況です。

また、免許証など以外に、個人情報データ満載のカードをもう1枚常に持ち歩くとなると、紛失の可能性も増えることになります。

3.持ち歩きがそもそも面倒

この制度を利用するためには、マイナンバーカードを常に持ち歩かなくてはいけません。
また、スーパーやコンビニでのちょっとした買い物ごとに、マイナンバーカードを取り出すとなると、かなり面倒くさくありませんか?

例えば、コンビニでポイントカードを提出すればお得だと皆さん分かってはいます。
しかし、いくらお得になると分かっていても、「そもそも持ち歩かない」「そもそも作らない」といった方は多くいらっしゃるのも事実だと思います。

こういったことが面倒くさくて、「最大で4,000円の還付なんてどうでもいい」と、マイナンバーカード自体を取得しない・提出しない方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
(勿論、こういった方は還付金がどうでもいいと思っているだけではなく、情報流出等への懸念もあるんだと思います。)

4.莫大な費用負担と新たな天下り先の創出

マイナンバーカードで情報を記憶する場合、当然ですがICチップを読み取る専用端末が必要となります。

この専用端末、すべての「酒類を除く飲食料品」を扱っている店舗の各レジ毎に必要になります。
勿論、政府が新たに設置する「軽減ポイント蓄積センター」と接続するため、クレジットカード読取機のような市販されているシステムを、そのまま使うことは不可能です。
また、セキュリティも万全でなければならないので、大手メーカーが販売したものでなければいけないとされています。
どの程度の金額になるのか分かりませんが、大手メーカーが製造することを考えればかなりの金額となるでしょう。

さらに、「軽減ポイント蓄積センター」という新たな天下り先を設置することも問題点だらけです。
センター設置や運営にかかる人件費等といった運営コストも莫大なお金になります。
当然ながらそのお金の出所も、私たちが払った税金からとなります。

税負担が増えるのに、その増えた国民の税金も使って、新たな天下り先を作ることにしかならないと批判されていますが、至極当然の反応だと思います。

5.申請方法の煩雑さ

還付のためには、インターネットを通じて還付申請の手続きが必要になります。

しかし、こうなると、

  1. 面倒くさくてやらない人
  2. お年寄りなどインターネットの使い方が分からず、還付手続きが出来ない人

などが生まれるのも自明の理です。

最悪、ⅰの方は面倒くさくて自分自身が申請しないことを選んだのだから仕方ないと言えるかもしれません。
しかし、ⅱの方は、申請したくてもできない方です。
こういった方は低所得の方が多いかもしれません。

しかし、この制度のままであれば、本来還付されるはずの金額が、消費者のもとに還付されることはありません。
そして、還付されなかったお金の行き先は、当然、国ということになります。
誰を助ける為に運用される制度なのか、もう一度よく考えていただきたいと思います。

まとめ

この制度には、ざっと見ただけで以上のような問題点が挙げられます。
とにかく無駄が多くて回りくどい還付型の「日本型軽減税率制度」。
この制度のような無駄は、詳細な説明は省きますが諸外国が取り入れているようなインボイスを用いた「軽減税率制度」にすれば、必要なくなる可能性が高いです。

その為、単純な解決策は、インボイス方式を導入した上で、該当する飲食料品に対しては最初から消費税を8%にする通常の「軽減税率制度」の導入です。
勿論、インボイスを使用することの事業者の事務負担増加はかなりの量になると思いますが、消費税の適正な納税の為にも導入するべきだと思います。

また、どうしてもインボイスの導入に抵抗があるのなら、申請の煩雑さなどを省いて、所得区分に応じた還付金を配布することも、一応の解決策だと思います。

この制度そのものに解決すべき運用上の問題はまだまだ山積な上に、大量に税金を使い、さらに天下り先になることが目に見えている機関を作ることになるなど、このままの制度では無駄にしかならないと思います。
繰り返しになりますが、果たして「誰を助ける為に運用される制度なのか?」をもう一度きちんと考えて欲しいものです。

なお、ここに書きました情報は、現時点での制度案のため今後もこの日本型軽減税率制度の動向を注目していきたいと思います。

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