医療費控除~医師等による診療等の対価とは~ - 

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医療費控除~医師等による診療等の対価とは~



医療費控除の対象となる医療費については、国税庁タックスアンサーの「医療費控除の対象となる医療費」に載っていますが、今回はその中の「医師等による診療又は治療の対価」について、国税庁の質疑応答事例等を交えて具体的に見ていきたいと思います。

マッサージ代やハリ代

Q
健康維持のためのマッサージ代やはり代は、医療費控除の対象になりますか?

A
治療のためのマッサージ代やはり代は、原則として医療費控除の対象となりますが、健康維持のためのマッサージ代やはり代は、医療費控除の対象とはなりません。

この回答が示すようにマッサージ代やハリ代のすべてが医療費控除の対象となるわけではありませんが、何かの症状(肩こりが原因で頭痛がする、歩くとヒザが痛むなど)があり、その症状を治すためのものであれば医療費控除の対象となります
もちろん、「どこも悪くないのに月に1回はハリを打たないと調子が悪い」といったようなものは医療費には含まれません。
健康維持を目的とするマッサージやハリ代は、ビタミン剤を服用するのと変わりがないことから、医療費控除の対象にはならないということです。

また、医療費として認められるもう1つの条件として、国家資格を持つ専門家(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律に定める施術者及びこれに準ずる者)に支払うものに限るとされています。
稀にマッサージ等の技術を習得した人が無資格で施術するという例もあるようですので、一応気をつけておいてください。

人間ドックの費用

Q
いわゆる人間ドックの費用は、医療費控除の対象になりますか?

A
いわゆる人間ドックその他の健康診断は疾病の治療を伴うものではないので、その人間ドック等の費用は医療費控除の対象とはなりません。
ただし、健康診断の結果、重大な疾病が発見され、引き続きその疾病の治療を行った場合には、その健康診断は、治療に先立って行われる診察と同様に考えることができますので、その健康診断のための費用も、医療費控除の対象に含まれます。

この回答の通り、人間ドックの費用は、基本的に医療費控除の対象にはなりません
健康診断単体では、治療が伴わず単なる検査費用だからです。
しかし、重大な病気が発見されて引き続きその病気の治療を受ければ、その人間ドックの費用も医療費控除の対象になります。
単なる健康診断ではなく、治療のための診断とみなされるからです。

例えば、メタボリクシンドロームに係る特定健康診査の結果、高血圧症、資質異常症または糖尿病と同等の状態と診断され、引き続き医師の指示に基づき特定保健指導が行われた場合には、その特定健康診査の自己負担金は医療費控除の対象となります。

眼科医に支払う治療費等

Q
眼科医で治療を受けるために支払う次の費用は、医療費控除の対象となりますか。

  1. 視力回復レーザー手術(レーシック手術)の費用
  2. オルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)の費用
  3. 眼鏡の購入費用

A
次の通りです。

  1. 視力回復レーザー手術(レーシック手術)とは、角膜にレーザーを照射して近視や乱視などを治療し、視力を矯正する手術のことです。
    この手術は、眼の機能それ自体を医学的な方法で正常な状態に回復させるものであり、それに係る費用は、医師の診療又は治療の対価と認められますので、医療費控除の対象となります
  2. オルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)とは、近視などの角膜の屈折異常を特殊なコンタクトレンズを装用することにより、屈折率を正常化させて視力の回復をさせるものです。
    この治療も、眼の機能それ自体を医学的な方法で正常な状態に回復させるものであり、それに係る費用は、医師の診療又は治療の対価と認められますので、医療費控除の対象となります
  3. 近視や遠視などのために日常生活の必要性に基づき購入されるものは、視力を回復させる治療の対価ではないので、医療費控除の対象とはなりません
    しかし、例えば、斜視、白内障、緑内障などで手術後の機能回復のため短期間装用するものや、幼児の未発達視力を向上させるために装着を要するための眼鏡などで、治療のために必要な眼鏡として医師の指示で装用するものは、医師による治療の一環として直接必要な費用ですので、医療費控除の対象となります

レーシック手術は、保険診療の対象外となっていますが、眼の機能自体を医学的な方法により正常な状態に戻すものですから、その費用は「医師による診療または治療の対価」に該当します。
保険診療でないからと言って、全てが医療費控除の対象にならないわけではありませんのでご注意ください。

骨髄バンクに支払う患者負担金

骨髄移植のあっせんを受けるため、骨髄バンクに支払う患者負担金は医療費控除の対象になります

骨髄バンクへの患者登録は、医師が患者の治療に必要不可欠であると認めたうえで医師を通じて行われ、患者負担金の決定と変更にあたっては厚生労働省に届け出るなど同省が関与することになっています。
これらのことから、骨髄バンクに支払う患者負担金は、医師による診療または治療の対価、医療またはこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要と認められるものとして医療費控除の対象になります。

歯列を矯正するための費用

Q
将来の就職や結婚を考慮して歯並びを矯正するための費用は、医療費控除の対象になりますか。

A
医療費控除の対象とはなりません。
発育段階にある子供の成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正のように、歯列矯正を受ける者の年齢や矯正の目的などからみて、社会通念上歯列矯正が必要と認められる場合の費用は、医療費控除の対象となりますが、容姿を美化し又は容貌を変えるための歯列矯正の費用は、医療費控除の対象とはなりません。
将来の就職や結婚を考慮しての歯列矯正は、一般的に容姿を美化し又は容貌を変えるためのものであると認められ、この場合の費用は、医療費控除の対象とはなりません。

美容や見た目の改善を目的とした歯列矯正治療は、医療費控除の対象とはなりません。
成人が行う歯列矯正の場合、この美容目的とみなされ認められないのではと思われている方も多いようです。
しかし、基本的には医師に「かみ合わせが悪くて機能的な問題があるので矯正治療が必要」と診断されていれば、医療費控除の対象となります

インフルエンザの予防接種費用

これは有名なので皆さんご存知かもしれませんが、インフルエンザの予防接種費用は、医療費控除の対象になりません
あくまでも疾病の予防のためにかかる費用であり、治療が目的ではないからです。

B型肝炎の患者の介護にあたる親族のB型肝炎ワクチン接種費用

Q
夫がB型肝炎になったため、医師の勧めにより妻がB型肝炎ワクチンを接種した場合の費用は、医療費控除の対象になりますか。

A
原則として医療費控除の対象となります

海外旅行を行う際に予防接種を受ける場合の費用のように疾病の予防のための費用は、医療費控除の対象とはなりません。
したがって、B型肝炎ワクチンの接種についても、B型肝炎の予防のためにのみ行われる場合、それに要する費用は医療費控除の対象とはなりません。
しかし、B型肝炎の感染経路の主なものは血液による感染、性的接触による感染及び母子感染であり、B型肝炎にかかっている者の介護に当たる家族に感染する危険性が非常に高いため、その家族にB型肝炎ワクチンを接種することは、医師によるB型肝炎の患者の治療の一環として不可欠であるといわれています。
このようなことから、B型肝炎の患者の親族(その患者と同居する者に限ります。)のB型肝炎ワクチンの接種に要した費用については、医師による診療又は治療を受けるため直接必要な費用として医療費控除の対象に取り扱われています。
なお、B型肝炎ワクチンの接種に要した費用について医療費控除を受けるためには、B型肝炎にかかっており医師による継続的治療を要する旨の記載のある医師の診断書と、B型肝炎ワクチンの接種に要した費用の領収書を、確定申告書に添付するか、確定申告書を提出する際に提示することが必要です。

基本的に予防接種費用は、上のインフルエンザの予防接種費用と同じように治療を目的としたものでないため医療費控除の対象にはなりません
ただし何事にも例外はあり、このB型肝炎は家族間では極めて高い確率で感染するため、医師が治療の一環として家族に予防接種を勧めるため医療費控除の対象になるということです。

医師やナースセンターに対する贈物の購入費用

Q
入院中や退院の際に、担当の医師や病院のナースセンターに対して贈物をした場合、その贈物の購入費用は、医療費控除の対象になりますか。

A
医療費控除の対象とはなりません。
担当の医師や病院のナースセンターに対する贈物の購入費用は、一般的には、医師による診療等の対価や看護師による療養上の世話の対価には当たりません。
また、医師による診療等を受けるため直接必要な費用にも当たりませんので、医療費控除の対象とはなりません。

医療費控除の対象にしたい気持ちはわかりますが、医療費控除の対象にはなりません

禁煙治療費

禁煙治療が医療費控除の対象になるかどうかについては「禁煙治療は医療費控除の対象?」をお読みください。

医療費控除を受けるためには、確定申告をしなくてはなりません。
確定申告のご相談は朝日税理士法人までお気軽にお問い合わせください。

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