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教育資金の一括贈与について~平成27年度改正点も含めて~



前回書いた「教育費や生活費は贈与になるの?」で、教育資金の一括贈与は、教育資金として使用する資金をまとめて(上限1,500万円)無税で贈与する手法であり、メリットは、
・祖父母等から本来相続人でない孫等にまとめて財産を移せる
・相続人である子がその親から贈与を受けて、3年以内に親が無くなってしまった場合に、本来はかかる相続税の生前贈与加算が無いこと
等がありますと記載しました。

今回は、その教育資金の一括贈与について改正点を含めて詳しく書きます。

制度の概要

以前もお話ししました通り、親子などの扶養義務者間で行われる教育資金の贈与で、その必要なときに行われるものについては贈与税の対象になりません。
例えば、子供の大学の入学金や学費を、必要な時に必要な金額だけ両親が負担すれば、贈与税が課税されることはないのです。
それにもかかわらず、この「教育資金の一括贈与」が作られたのは、教育資金を一括で贈与したいというニーズが高かったからだと思われます。
今回の制度は、「まとめてお金を贈与しても、そのお金の使い道が教育資金に限定されているから、その都度贈与された教育資金と実質的に何も変わらないので、贈与税は課税しませんよ」という制度です。

この制度の条件等を下のようにまとめてみましたので、ご利用になる場合はよくお読み下さい。
ちなみに、赤字で記載している部分が平成27年度税制改正で延長・拡充された部分です。

贈与者(あげる人)

親、祖父母、曽祖父母等の直系尊属

受贈者(もらう人)

30歳未満の子ども・孫等

非課税限度

受贈者 1 人につき 1,500 万円まで
※学校等以外に支払う費用については 500 万円が限度。

期間

平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に拠出されるもの

教育資金の範囲

これは、細かく書き出したらキリがありません(一一”)
文部科学省からQ&Aが出ていますので確認してみてください。
少しだけまとめてみますと・・・

1.学校等に直接支払われるもの

(1) 入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
※幼稚園、小・中学校、高等学校、大学等(外国の学校でも一定のものは認められます)の学校名が記載された領収書があれば、ほぼ教育費となると思われます。

(2) 学用品の購入費や修学旅行費や学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など
※修学旅行・遠足費や施設設備費、PTA会費であっても学校等からの領収書があれば対象となると思われます。
ただし、学校の指示の下で、業者から直接購入した場合は、1,500万円までの非課税対象とはならず、次の学校等以外への支払の500万円までの非課税対象にしかなりません。
さらに、この場合は、業者からの領収書だけでなく、学校等が認めたものであることがわかる文書(この業者から○○を買いなさいという内容)も合わせて提出しなければいけません。

2.学校等以外に直接支払われるもの

(1) 学習塾や水泳教室などに直接支払われるもの
① 教育(学習塾、そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
② スポーツ(水泳、野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)その他教養の向上のための活動に係る指導への対価など
※塾・習い事等の場合は、社会通念上相当と認められるものに限り、500万円まで非課税対象の教育資金となります。
③ 上記①の役務提供または上記②の指導で使用する物品の購入に要する金銭
※物品については、指導者の名で領収書がもらえる支出に限られますから、塾で使う参考書等を一般書店で購入しても非課税対象とはなりません。

(2) 上記2.(1)以外で、物品の販売店などに支払われるもの
① 上記1.(2)に充てるための金銭であって、学校等が必要と認めたもの
※先ほども書きましたが、学校等が認めたものであることがわかる文書も合わせて提出しなければいけません。
通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費(平成27年4月以降に支払う一定のもの)
※通学定期代・・・あくまで通学定期代のみであり、切符や電子マネーのチャージ料は、対象外です。
※留学渡航費・・・1回の留学につき、1往復までの渡航費が対象です。なお、空港までの交通費は、対象外です。
※学校等の入学・編入学等にともなう転居による交通費・・・1回の転居につき、1往復までの交通費が対象です。なお、親の転勤にともなっての転校・転居による交通費は対象外です。

開始・支払手続き

教育資金の一括贈与の非課税制度の手続きは、全て金融機関で行えます。
なので、贈与者・受贈者が税務署に行くこともありません。
(私たち税理士が手続きを代行することも、契約が終了して贈与税の申告が必要な場合以外はありません。)
この規定の適用を受けた受贈者は、税務署へ「教育資金非課税申告書」を提出する必要がありますが、申告書の提出は金融機関を通して行われるため、本人が直接税務署へ行く必要はありません。
金融機関が全てやってくれるのです!なんて簡単!!

しかし、開設した口座からの払出・支払は簡単とはいかないのが現状のようです。
開設した口座からの払出については、開設時に
(イ) 教育資金を支払った後にその実際に支払った金額を口座から払い出す方法
(ロ) (イ)以外の方法
のいずれかを選択しなければなりません。(これだけでは、意味が分かりませんね(>_<))

(イ)は、「先に教育費を支払い(立替払い)⇒ 1年以内に領収書等を金融機関に持参 ⇒ 開設した口座から引出」という流れです。
一方(ロ)を選択すれば、「教育費を先に口座から払出 ⇒ 領収書等を後で金融機関に持参する方法等」ということも可能です。
イメージは下の図の通りです。

領収書等の提出時期

(出典:国税庁の「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」より)

これがなぜ簡単にいかないかというと・・・

例:(イ)の方式を選択して口座を開設したAさん。
Aさんは、遠方にある学校に通うために学校近くにあるアパートを借りて住むことにして、大家さんに家賃・礼金等を支払った。
Aさんがこのアパートを借りて住むのは学校に通うためなので、教育資金に該当すると思っていた。(実際には、この制度に規定されている教育資金には該当しません)
この家賃等を払出しする予定で銀行に領収証等を持っていったが、銀行の担当者から教育資金に該当しないといわれて払い出しできなかった。

というようなことがよくあるからです。
銀行等の窓口の方も教育資金に該当しなければ「払出し出来ない」と言うしかないので、これに対して「どうしてだ」と怒られても困りますよね。
この「教育資金の範囲の認識の違い」で揉めてしまうケースがよくあるので、使う側もきちんと制度を理解して、どこまでなら教育資金に該当するのかを判断することが大事です。

また、仮にAさんが(ロ)の方式を選択していて、先に家賃等の金額を払出していたらどうなるでしょうか?
これは、教育資金に該当しないものの為に払い出してしまったので、この部分に関しては贈与税の課税対象になってしまう可能性があります。
その為、(ロ)の方式でも注意点(教育資金の範囲)は変わらないのです。
特にこの場合は、既に家賃等として支払ってしまっているので、現金としては口座に残っていません。
それでも、最終的に贈与税の支払いが起きた場合には、贈与税を納めなければいけないので、口座に残高が残っている(イ)より大変かもしれません。

ちなみに、この支払い手続きでも平成27年度税制改正で改正がありました。
それは、平成28年1月1日以後に提出する書類については、領収書等に記載された支払金額が1万円以下で、かつ、その年中における合計支払金額が24万円に達するまでのものについては、当該領収書に代えて、教育資金の内訳などを記載した明細書を提出するが認められるというものです。

契約の終了

育資金管理契約は無限に続くわけではなく、次の①~③に該当したときに終了すると定められています。
①受贈者が30歳に達した場合
②受贈者が死亡した場合
③口座の残高が0になった場合で、口座契約を終了させる合意があった場合

残額の取扱い

・受贈者が30歳になった時(上の①の場合)や、口座の残高が0になった時(上の②の場合)は、非課税拠出額から教育資金支出額を差し引いた残額※が贈与税の課税価格に算入されます。
※これは、教育資金以外の目的で口座から引き出した場合や、教育資金に支出したが領収書等を提出しなかった場合などは、口座の残高が0になったとしても、贈与税を課税するということです。
その為、30歳になった時に110万円(贈与税の基礎控除額)を超える残高があった場合には、それだけで贈与税の申告を行う必要があります。
・受贈者が30歳になる前に死亡した場合(上の②の場合)には、その口座に資金が残っている場合でも、贈与税の課税価格に算入されるものはありません。

教育資金の一括贈与制度のメリットは?

①贈与時に最高1,500万円まで贈与税がかからず贈与できる。
②暦年贈与との併用が可能
・教育資金の一括贈与制度の贈与とは別に、年間110万円までの贈与があっても贈与税はかかりません。
③贈与者が死亡した場合でも相続税はかからない
贈与者が死亡した場合には、相続人等への教育資金の一括非課税贈与が、相続開始前3年以内のものであっても生前贈与加算の対象となりません。
※ただし、受贈者が30歳になった時の残額については、「贈与者」から贈与があったものとみなして贈与税が課されますので、受贈者が30歳に達した日以後3年以内に贈与者が亡くなった場合には、生前贈与加算の対象となります。

教育資金の一括贈与制度の注意点は?

①領収書をとっておき、金融機関に提出する必要がある
この金融機関への領収書の提出が結構手間がかかります。
面倒くさがり屋の方には向いてないかもしれません。
また、領収書等の紛失にもお気を付け下さい。

②複数の金融機関等での口座開設はできない
子や孫等の受贈者1人につき1,500万円ですから、祖父から1,500万円で1口座、祖母から1,500万円で1口座、合計3,000万円の非課税枠という計算にはなりません。

③計画・シミュレーションが最も重要
何事もそうですが、何かをする前に計画を立て、それが本当に必要な事なのかシミュレーションすることが最も重要になります。
例えば・・・
あまり考えずに相続税対策になると思ってこの制度を利用したけど、きちんと相続財産を計算してみたら、そのままでも相続税がかからなかった。
しかし、この制度を利用した為に、無駄に贈与税を支払ってしまった
なんてことになったら目も当てられません(>_<)

しかし、制度をきちんと理解しないまま、子・孫の為になるというだけで始めてしまえば、このような事態に陥ることは十分に考えられます。

こういった制度をご利用する場合は、制度・メリット・注意点等をよくご理解した上でご利用ください。
でないと、一度利用を開始してしまうと後でやめますということは出来ないので、取り返しがつきません。

生前贈与を含めた相続税対策は朝日税理士法人にお任せ下さい。

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