事業承継税制の内容

事業承継税制の内容
では、事業承継税制とは具体的にどのような制度であり、この制度を利用するとどのようなメリットがあるのでしょうか?

*事業継承税制とは
事業承継税制は上記のとおり、中小企業の後継者の税負担を軽減させるための制度で、平成21年度税制改正において相続税と贈与税のそれぞれに納税に関する制度が設けられました。これにより、それぞれ一定要件を満たせば、相続税の場合その株式に係る相続税の80%が、贈与税の場合100%が納税猶予されることとなりました。
(※どちらも発行済議決権株式総数の3分の2まででこの中には後継者がすでに保有していた議決権株式数が含まれます。)
ところがこのクリアしなければならない「一定要件」というものが中小企業にとって非常に厳しくリスクも大きかったため、名ばかりの税制度となっていました。そこで「事業承継税制」の適用を容易にし、中小企業の経営者の方々がより安定して経営を存続できるようにと図って行われたのが今回の平成25年度税制改正なのです。

*改正後の適用要件
事業承継税制の適用要件の数は非常に多く、内容も多岐にわたります。具体的には、会社要件、後継者要件、先代経営者要件、事業継続要件、株式保有要件、雇用継続要件の6つに大きく分けられます。今回の改正によってこれらの要件の多くが見直され、経営者の方々が利用しやすいように緩和されました。次に挙げる箇所が、今回の事業承継税制改正の主なポイントとなるところです。

(1)後継者の要件の緩和(相続税・贈与税)

  • 経営承継相続人等の要件のうち、非上場会社を経営していた被相続人の親族であることとする要件が撤廃されます。
    親族に限らず適任者を後継者にすることができるようになりました。

(2)雇用確保要件の緩和(相続税・贈与税)

  • 納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、現行では事業承継から5年間は、相続又は贈与時の常時使用の従業員数の8割以上の雇用を毎年継続しなければなりません。つまり一度でも8割を下回ってしまうと、納税猶予の取消の対象に該当してしまい、利子税を加えた猶予額の全額を納付しなければならないのです。
    しかし、今回の改正案によって5年間平均で8割以上を確保することに要件が緩和されることになりました。
    毎年の景気変動にも対応できるようになりました。

(3)利子税の負担軽減(相続税・贈与税)

  • 事業承継期間である5年間の経過後に納税猶予税額の全部又は一部を納付する場合については、その期間中の利子税を免除することとされます。また、納税猶予期間に係る利子税率が年2.1%だったのが、改正後は年0.9%に引き下げられます(特例基準割合が2%の場合)。

(4)先代経営者の役人退任要求の緩和(贈与税)

  • 贈与税の納税猶予における贈与者の要件のうち、贈与時において認定会社の役員でないこととする要件について、贈与時においてその会社の代表権を有していないことに改正されます。
    代表者を退任すれば引き続き有給役員として残留することが可能となり、先代経営者の信用力を活用することができます。

(5)納税猶予税額の再計算の特例の創設(相続税・贈与税)

  • 民事再生計画の認可決定等があった場合には、その時点における株式等の価額に基づいて納税猶予税額を再計算し、その再計算後の納税猶予税額について、納税猶予を継続する特例が創設されます。
    事業の再出発に対する配慮がなされました。

(6)納税猶予税額の計算方法の見直し(相続税)

  • 納税猶予税額の計算において、被相続人の債務及び葬式費用を相続税の課税価格から控除する場合には、非上場株式等以外の財産の価額から控除することとされます。
    債務の相続があっても株式の納税猶予をフル活用できるようになりました。

(7)手続きの簡略化(相続税・贈与税)

  • 現行では必要な経済産業大臣による事前確認制度が廃止されます。また相続税等の申告書、継続届出書等に係る添付書類のうち、一定のものについては、提出を要しないこととされます。
    手続きが簡略化され、制度を利用しやすくなりました。

このように、今回の税制改正によって大幅に制度利用者の負担が軽減されより効果的に相続税・贈与税の納税猶予制度を利用することができるようになりました。経営者の方々にとって大変有利に働く事業承継税制、ご利用を一度ご検討されることをおすすめいたします。
しかし、いくら利用しやすくなったといってもご利用前のリスク検討はかかせません。またさまざまな要件が緩和された代わりに一部要件が厳しくなった部分もあります。

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