滞留している債権の回収には、手間やコストがかかります。
先方となかなか連絡がとれない、口では払うと言っていてもいざ約束の日が来ると先延ばしの話になってしまうこともあります。
そんな債権の回収手段のひとつに「相殺」があります。
もし同じ相手方に対して金銭債務を負っている場合には、こちらからの意思表示で相手に対する債権と同額を消滅(相殺)させることができます。
実際の意思表示は、通常相殺通知書の送付により行われます。
ただし、相殺が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
なお、以下の相殺禁止事由がある場合には上記の要件を満たす場合であっても相殺が出来ません。
他にも相殺禁止事由がありますが、相殺禁止事由は細かく設定されているのでご注意ください。
相殺は簡易に行い、その効果を得ることができますが、以下のトラブルが起こることもあります。
必ず金銭貸借・売買契約等の作成及び保管をし、相殺するのであれば両者の間で相殺合意書等を作成(調印も忘れずに)する等し、通知した旨の証拠を備えておきましょう。
一般に債権と債務を相殺した場合において、その事実を証明する方法として多くの場合領収書を作成します。
この領収書は、領収書としての表示がなされていますが、現実には金銭等の受領はないため、収入印紙は必要ありません。
ただし、たとえ相殺の事実を証明するために作成される領収書であったとしても、相殺の事実がその領収書上で明らかになっていない場合には、印紙税法上の受取書とみなされてしまいますので、相殺の事実を証明する領収書に記載されている金額分売掛金等と相殺した旨(「上記金額売掛金と相殺」等)をしっかりと記載しておかなければなりません。
また、差額の精算が行われている場合、その領収書には受取差額に応じた収入印紙が必要となります。
※なお、相殺による副次的な効果として、自己資本比率の改善があります。
銀行借り入れがある会社においては、自己資本比率などの財務指標も重要視されます。
上記に該当する債権が多額な場合には、検討してみてはいかがでしょうか。