• 電話番号
  • メールアドレス

住宅ローンのボーナス払いと事前確定届出給与



10月決算のある法人で、こんなやりとりがありました。
当期の決算の見込みや来期の役員報酬の額についても検討していたのですが、その役員中に、期中に従業員から役員になった方がいらっしゃいました。

社長「役員にも冬のボーナスを出したいんだけどな。」
私 「役員さんは、事前に届出をしておかないとボーナスは出せないですよ。」
社長「そうか、そう言えば何かそんなこと言ってたね・・・」
私 「思い出しました?」
社長「11月に住宅ローンのボーナス払いがあるらしいから出してやるって約束なんだよ・・・」
私 「!」

事前確定届出給与の届出はいつからできる?

事前確定届出給与に関する届出書の提出期限は、基本的には決議をした株主総会の開催日から1月以内です。11月中に決算を固めてしまえばその月中の支給も可能ですが、それはどうも無理そうです。
それなら、前倒しで提出できるのか?例えば、10月決算ですから11月に入ってすぐ臨時株主総会を行ってそこで事前確定届出給与について決議したうえで届出と支給を行うことができるでしょうか?

毎月の支給額(定期同額給与)については期首から3か月以内の改定として、臨時株主総会を行って早めに改定するケースが実際にあると思いますが、事前確定届出給与についてもそれと同じようにできるのでしょうか?

今回のケースで、急いで賞与を支給するために11月に臨時株主総会を開いて事前確定届出給与のみ決議をし、月額については12月の定時株主総会で決議するとします。
届出書の提出期限だけを考えれば問題なさそうなのですが、月額給与と切り離すことが果たしてできるのかどうか、という点が気になります。
役員給与は、ごく簡単に言えば定時株主総会で次の定時株主総会までの期間について職務執行を委任することによる報酬です。従って、月額支給と賞与としての支給は一体のもので、その期間の委任の対価の総額をどういう形で支払うのかという支払い方の問題と言えます。
その考え方からすれば、事前確定届出給与だけを切り離すのはおかしい、ということになります。

役員給与と会社法

では、事前確定届出給与の届出と定期同額給与の改定を両方とも11月の臨時株主総会で決議すればどうでしょうか?
これなら両者を切り離すことなく決定することができます。

役員給与については、会社法で定款又は株主総会の決議によることが定められています。
一般的には定時株主総会において新たな職務執行期間についての委任を決定し、給与の支給額を定めることになりますが、当然ながら会社法の規定を前提として法人税法も規定されているはずです。
通常、職務執行開始の日というのは定時株主総会において職務執行期間についての委任を受けた日となるため、期首に臨時株主総会を行ってまだ委任を受けていない新たな職務執行期間の報酬額についての決議を行うことは、少々問題があるのではないかと思います。

ということで、今回のようなケースは、11月支給はあきらめて12月のできるだけ早い時期に決算を終わらせて事前確定届出給与の届出と支給を行うのが安全かなと思います。

なお、退職給与規定が定められていれば、その規定に基づいて使用人であった期間に対応した退職金の支給を行うことが可能です。

坂口

税務に関するご相談は、朝日税理士法人

お問い合わせ

朝日税理士法人

住所:岡山県岡山市中区平井5-6-4