ふるさと納税 各論賛成・総論反対?



「ふるさと納税」が人気です。

「ふるさと納税」は平成20年度税制改正により導入された制度ですが、初年度たる平成20年度は、受入額81.4億円、受入件数5.4万件でスタートしました。

しばらくは横ばいが続いてましたが、26年度から右肩上がりに転じ、28年度実績は、受入額2844.1億円(対前年度比:1.7倍)、受入件数1271.1万件(対前年度比1.8倍)と著しい増加です。

「納税」という言葉がついていても都道府県及び市町村に対する「寄付」ですから、本来は経済的利益の無償の供与であるはずです。しかし実際には、受け入れ先自治体の94.2%が返礼品を送付しています(ふるさと納税に関する現況調査結果より)。 寄付者側も、お取り寄せ品の購入感覚になっている現状があります。

寄付者たる個人は、寄付額のうち2千円を超える部分について、一定の上限まで所得税と住民税から全額控除されますが、自己負担額の2千円を上回る返礼品を期待して寄付先を選択するのは合理的です。寄付をしない場合よりもメリットを得られます。

寄付を受けた自治体は、基本的に収入が増えますが、単純に全額が財源になるわけではありません。

返礼品を提供してくれた企業への支払、専門ウェブサイトへの登録・掲載料、クレジットカード決済の手数料、ふるさと納税の業務従事者の人件費等、諸経費がかかるからです。

それでも、寄付の受入額から諸経費を差し引いてプラスになれば、メリットがあるわけです。

このように、寄付者と寄付を受けた自治体は得しているとして、損をする人や団体はいないのでしょうか。

そんなことはありません。寄付者が居住している自治体(当該自治体における寄付者以外の住民)と国(国民全体)が負担をしているんです。

住民が居住地以外の自治体にふるさと納税をすれば、寄付金控除によって、その住民が居住する自治体の税収(住民税)が減少します。

また、国は、寄付金控除による所得税の減収と地方交付税の増加の影響を受けます。

地方交付税(普通交付税)とは、簡単に言えば、一定の住民(行政)サービスを提供するために必要な税収を確保できない自治体に対して、その不足額を国が補填するという仕組みです。

地方交付税の原資は、所得税、法人税、消費税等です。

寄付者の居住する自治体においては、ふるさと納税によって減少した税収のうち75%相当額は地方交付税の増加によって補填されますが、残りの25%相当額は実質的な負担となります(地方税交付税の不交付団体は、補填がないのでまるまる減収となります)。

寄付者やふるさと納税に関係する業者等が直接的なメリットを肌で感じる一方で、国や自治体レベルの行政サービスの低下により、ふるさと納税をしていない人達に負担を強いていることになります。

ふるさと納税の受け入れによって寄付金収入が増えた自治体に対して、現行の制度上、地方交付税は減少しません。

自由に使える財源が純粋に増加するんです。

ふるさと納税は寄付をしていない納税者の負担の上に成り立っている制度ですから、その制度によって受け入れた寄付金の使途が重要です。

寄付者も受け入れ自治体も、その使途を真剣に考えて、無駄な意味のない使われ方をしてほしくないと、切に願います。

oka

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