修繕費と資本的支出 ~判断の難しい事例
以前の記事、「修繕しても当期の経費にならない?」「修繕費と資本的支出 ~具体例」では修繕費と資本的支出についての基本的な考え方と、簡単な具体例をご紹介しました。
今回は、過去の裁決にあった判断の難しい事例について、そのポイントを見ていきます。
雨漏り防止工事の例
【屋根全体をカラートタンで覆ったケース】
建物の屋根の20箇所以上から雨漏りが発生していたため、屋根全体をカラートタンで覆う工法により修繕をしたケースです。
実際に雨漏りが発生しているため現状回復に必要な費用として修繕費にできるでしょうか?
このケースは、雨漏りの発生する箇所を個別に修繕可能だったところ、屋根全体を覆う工法は屋根の耐用年数を延長させる工事と認められるため、建物の使用可能期間を延長させる支出として資本的支出に該当するとされました。
【陸屋根の上に鉄骨を組んでアルミトタンの屋根で覆ったケース】
陸屋根というのは鉄骨・鉄筋コンクリート造の建物等で採用される平らな屋根のことですが、その屋根の上に鉄骨を組んでアルミトタンの屋根で覆ったケースです。
このケースも資本的支出に当たりそうですが、裁決では、修繕費とされました。何故でしょうか?
一般的に鉄骨・鉄筋コンクリート造の陸屋根式建物は雨漏りの経路の特定が困難で完全な修理は難しいとされており、過去何度も補修工事を行ったにも関わらず雨漏りが続いていたことから今回の工事を行わなければを短縮することになってしまう点、今回採用された工法は応急的かつ最も安価な方法と認められる点等を考慮すると、建物の維持管理のための措置であったと認められました。
【外壁天井防水美装工事等のケース】
このケースは簡単に結論だけご紹介しておきます。
外壁等への樹脂の注入工事等
→建物全体でなく一部だった
→修繕費
塗装工事等
→建物の通常の維持管理に必要な修繕そのものか、その範疇に属するもの
→修繕費
外壁天井防水美装工事
→補修工事に伴う補修面の美装工事であって、塗装材として特別に上質な材料を用いたものではない
→修繕費
賃貸用マンションのシステムキッチン等の取替工事の例
築17年の賃貸用マンションのシステムキッチン及びユニットバスの取替工事を行ったケースです。
建物の居住用機能を回復するために必要な工事であり、建物の基礎及び柱等の躯体に影響を与えるものでなく、その価値を高めるものでもないとして修繕費とされるでしょうか?
工事の内容は単に既存の台所設備及び浴室設備の一部を補修・交換したものでなく、既存の設備等を全面的に取り壊し、新たにシステムキッチン及びユニットバスを設置したものです。
台所や浴室は建物内の各住宅内で物理的・機能的に一体不可分の関係にあり、そうした建物の各住宅を形成していた一部の取壊しと新設が同時に行われたものと考えると、台所及び浴室を新設したことによって建物の価値を高め、また耐久性を増すことになると認められるため、資本的支出に該当するとされました。
まとめ
いかがですか?修繕費となるか資本的支出となるか判断の難しいケースでは、相当しっかり考えて判断しなければいけないですね。
税額への影響も大きくなりがちですので、ご検討・ご相談はお早めに。