日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の書類の添付義務化



平成27年度税制改正による影響

近年、国際結婚した日本人や海外に親族を残して、日本で働く外国人が増えてきています。
日本の所得税法では、そういった方の日本国外に居住する親族についても、要件を満たせば扶養控除等の適用を受けることができます。

従来、納税者の親族であることを確認できる書類や、親族の生活費等に充てるための送金を行ったことを確認できる書類等の提出は求められていませんでした。
しかし、平成27年度税制改正により、原則として、一定の親族関係書類及び送金関係書類の添付又は提示が義務化されました。

平成28年1月1日以後に支払われる給与等及び公的年金等、平成28年分以後の所得税から適用されます。

改正の背景

会計検査院の平成25年度決算検査報告において、「適用条件を満たしているか十分な確認が出来ていないまま扶養控除が適用されている」状況等が指摘されていました。
相続税の申告において、過去に、養子縁組をたくさんして相続人を増やし、相続税を節税する手法がありました。
これと似た状況でしょうか。
海外の扶養親族の状況は把握しがたいため、国外に居住する親族に係る扶養控除の適用を厳格にすることによって、実際には控除対象扶養親族の要件を満たしていないケースを排除しようとするものです。

親族関係書類及び送金関係書類

親族関係書類とは

  1. 戸籍の附票の写し、その他国又は地方公共団体が発行した書類で、その非居住者がその居住者の親族であることを証するもの及びその親族の旅券の写し
    → 具体的には、戸籍の附票の写し、パスポートの写し等
  2. 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類で、その非居住者がその居住者の親族であることを証するもの(その親族の氏名、住所及び生年月日の記載があるものに限る。)
    → 具体的には、出生証明書等

送金関係書類とは

その年における次の1又は2の書類で、その非居住者である親族の生活費又は教育費に充てるために、その居住者からの支払が必要の都度行われたことを明らかにするもの。

  1. 金融機関が行う為替取引により、その居住者からその親族へ向けた支払が行われたことを明らかにする書類。
    → 具体的には、送金依頼書等
  2. クレジットカード発行会社が交付したカードを提示して、その親族が商品等を購入したこと及びその商品等の購入代金に相当する額を、その居住者から受領したことを明らかにする書類。
    → 具体的には、クレジットカード利用明細書等

また、これらの書類が外国語により作成されている場合には、訳文を添付等しなければなりません
扶養控除を適用するためには、書類の完備と和訳という、手間が必要になったわけです。

書類の添付等義務化の内容

日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の適用を受ける納税者に対して、義務付けされた親族関係書類等の内容は下記の通りです。

  1. 所得税の確定申告時
    非居住者である親族に係る扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は障害者控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類及び送金関係書類を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際に提示しなければならない。
    ただし、下記2又は3により提出し、又は提示したこれらの書類については、添付又は提示を要しない。
  2. 給与等又は公的年金等の源泉徴収時
    非居住者である親族に係る扶養控除、配偶者控除又は障害者控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類を提出し、又は提示しなければならない。
  3. 給与等の年末調整時
    非居住者である親族に係る扶養控除等の適用を受ける居住者は、送金関係書類を提出し、又は提示しなければならないこととし、非居住者である配偶者に係る配偶者特別控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類及び送金関係書類を提出し、又は提示しなければならない。

2.とは源泉徴収において扶養控除等を受ける場合、3.とは年末調整において扶養控除等を受ける場合をいいます。
年末調整を受けられる方は、基本的には確定申告をしないことが出来ますので、こうした場合には、親族関係書類や送金関係書類を税務署に提出する必要はないようです。

私も、平成26年分所得税確定申告期における申告相談に従事しましたが、その会場で、日本人男性と結婚したアジア地域国出身の外国人女性に応対しました。
その女性は、ご主人の所得税確定申告で自国に居住する母親と兄弟姉妹について扶養控除の適用を受けるため、来場されていました。
継続してその申告相談会場に来られており、過去に応対された税理士先生のご指導が良かったのか、親族関係書類や送金関係書類の写しを持参されていました。
ただ、親族関係書類等は英文だったので、完読はできませんでしたが・・・

同制度を悪用している納税者が少なくないとするならば、この制度の創設により扶養控除制度が適正に運用されればと思います。

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