「名義預金」って何ですか?
そもそも名義預金とは?
「名義預金」とは、形式的には家族の名前で預金しているが、実質的には名義人以外の真の所有者がいる預金、つまり、家族の名義を借りているにすぎない預金のことをいいます。
これだけでは意味が解りづらいですよね。
例えば、一般的によくある名義預金のケースが、
『祖父母が可愛い孫の為に、孫名義の口座をコッソリ作ってコツコツ入金している。
ただ、今すぐに孫に通帳やカードを渡すと、金銭感覚が狂ったり、無駄遣いしたりするかもしれないから、この通帳やカードは孫がある程度の年齢になるまで自分で持っておこう。』
といったものです。
こういったケース、実務をしていると本当によく見かけますが、一体何が問題なのでしょうか?
この問題の説明の為には、まず贈与の説明をしないといけません。
贈与って何?
贈与の定義は、相続税法で定められているわけではなく、民法第549条に
『贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。』
と規定されています。
どういうことかというと、贈与があったと言うためには、
- 祖父母の預金100万円を、平成27年6月30日に孫に無償であげる(自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示)
- 孫は「ありがたくもらいます」と言って預金100万円を受け取る(相手方が受諾をする)
という2つの条件を満たさなければならないということです。
そのため、一方的に「あげます」と言っても、もらう側が「もらいます」という意思表示をしなければ、贈与は成立しないことになります。
上で紹介したケースでは、祖父母がコッソリ孫名義の預金口座を作っていますので、孫はこの預金口座の存在を知りません。
当たり前ですが、存在を知らなければ、「もらいます」と言うことも出来ません。
その為、民法上の贈与契約が成立していないことから、税務上も贈与が行われたとは判断されず、この預金は名義預金と判断されるというわけです。
預金の存在を知っているだけでいいの?
それでは、孫が「預金口座の存在」と「毎年コツコツ貯めてくれている」ことを知っていれば、名義預金とはならないのでしょうか?
そんなことはありません。
上のケースのように、「孫がある程度の年齢になるまで自分で持っておく」ということは、祖父母が贈与したつもりの孫名義の預金を保管・管理・支配しているということです。
このような場合、実質的に孫は預金を自由に処分も運用をできず、所有者が移ったとは言えません。
その為、このままの状態で祖父母が亡くなった場合、この預金は名義預金となります。
預金所有者の判断基準
それでは、預金所有者の判断基準について考えてみたいと思います。
預金に限らず、財産は、その名義になっている人のものだと、まずは推定されます。
ただこれは、あくまで「推定される」だけなので、実際には違うということもありえます。
預金の場合には、単なる名義という形式的なことだけではなく、その預金の
- 資金の原資
- 実際の管理や支配、運用の状況
などの具体的事実から真の所有者が誰かを判断することになります。
1.「資金の原資」とは
「資金の原資」 = 「誰が稼いだお金なのか」ということです。
収入のない人は財産を作れない ⇒ だから稼いだ人がその預金の所有者となります。
例えば専業主婦なら、相続や贈与で財産をもらう以外には、自分の財産を持つことはない、と考えられます。
つまり、専業主婦の方々が普通にやっているであろう「へそくり」
これは、元々夫が稼いだお金が原資なので、いくら貯めても「妻のもの」ではなく「夫のもの」ということです。
2.「実際の管理や支配、運用の状況」とは
「実際の管理や支配、運用の状況」 = 「実際に、通帳や印鑑、キャッシュカードを持ち、預金を自由に出し入れしたり、使ったりしていたのは誰か」ということです。
そして、そのお金を「管理」するだけではなく、「支配」していなければなりません。
一般的に、財産を管理する人と支配する人は一致しますが、夫婦の場合には、預金を「管理しているのは奥さん」「支配しているのはご主人」ということがよくあります。
例えば、夫は仕事がある為、日中に銀行に行く時間が取れない。
その為、専業主婦の奥さんが夫の通帳やキャッシュカードをもって銀行に行き生活費の出し入れをすることは、よくあることだと思います。
そうすると、奥さんは家族が生活するためのお金をご主人から預かり、管理をしているだけとなります。
そのお金を自由に使い「へそくり」としていたとしても、それは夫からの包括的な同意を得て、家のお金を使用していただけと考えられ、結局、その預金を支配しているのは、大きな支出の権限を持っている夫となってしまうのです。
まとめ
残った生活費を奥さん名義の預金にコツコツ貯めていても、「その預金はご主人の預金ですよ」と言われることもよくあります。
そういうことを言われない為にも、残ったお金はご主人から奥さんに贈与されたものであることを明確にしておくことが必要になります。