「国外財産調書制度」について
近年、国外財産の保有が増加傾向にある中で、国外財産に係る所得税や相続税の適正な課税・徴収の確保を図る観点から、平成24年度税制改正において、国外財産を保有する方からその保有する国外財産について申告を求める仕組みとして、「国外財産調書制度」が創設され、平成26年1月から施行されています。
平成25年分の国外財産調書の提出状況は?
国税庁が平成26年7月に公表した初年度の総提出件数は、全国で5,539件(東京局3,755件、大阪局638件、名古屋局457件、その他689件)で、総財産額は、約2兆5,142億円(東京局20,989億円、大阪局1,793億円、名古屋局931億円、その他1,429億円)でした。
財産の種類別総額でみると、有価証券1兆5,603億円、預貯金3,770億円、建物1,852億円、土地821億円、貸付金699億円、その他2,396億円となっています。
国外財産調書を提出しなければならない方は?
居住者(「非居住者※」の方を除きます。)の方で、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える「国外財産」を有する方です。
※ この場合の非居住者とは、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内において国内に住所又は居所を有していた期間が5年以下である方です。
「国外財産」とは、「国外にある財産をいう」こととされています。
また、「国外にある」かどうかの判定については、財産の種類ごとに行うこととされていて、その財産の所在、その財産の受け入れをした営業所又は事業所の所在などによることとされています。
例えば・・・
- 不動産又は動産 ⇒ その不動産又は動産の所在
- 預貯金等 ⇒ その預貯金等の受け入れをした営業所又は事業所の所在
- 有価証券等 ⇒ その有価証券を管理する口座が開設された金融商品取引業者等の営業所等の所在
のように判定します。
国外財産の価額はどうやって算出するの?
国外財産の価額は、その年の12月31日における「時価(※1)」又は時価に準ずるものとして「見積価額(※2)」によることとされています。
(※1)時価とは、「その年の 12 月 31 日における国外財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいう」とされています。
(※2)見積価額とは、「その年の 12 月 31 日における国外財産の現況に応じ、その財産の取得価額や売買実例価額などを基に、合理的な方法により算定された価額をいう」とされています。
また、邦貨換算は、同日における外国為替の売買相場によることとされています。
具体的には、国外財産調書を提出する方の取引金融機関が公表する、その年の12月31日における最終の対顧客直物電信買相場(TTB)又はこれに準ずる相場(同日に当該相場がない場合には、同日前の当該相場のうち、同日に最も近い日の当該相場)により邦貨に換算します。
なお、国外財産が預貯金等で、取引金融機関が特定されている場合には、その預貯金等を預入れている金融機関が公表する上記の相場により邦貨に換算します。
国外財産の見積価額の例示
1.土地
- 外国又は外国の地方公共団体の定める法令により、固定資産税に相当する租税が課される場合には、その年の 12 月 31 日が属する年中に課された当該租税の計算の基となる課税標準額
- 取得価額を基に、その取得後における価額の変動を合理的な方法によって見積もって算出した価額
具体的には、取得価額に合理的な価格変動率を乗じて、その年の12 月 31 日における見積価額を算定します。
この場合の合理的な価格変動率は、その国の統計機関(統計局、統計庁など)が公表する不動産に関する統計指標等を参考にして求めることとなります。 - その年の翌年 1 月 1 日から国外財産調書の提出期限までに、その財産を譲渡した場合における譲渡価額
2.建物
- 上記「土地」の1~3のいずれかの価額
- 業務の用に供する資産以外のものである場合は、取得価額から、その年の 12 月 31 日における経過年数に応ずる償却費の額を控除した金額
具体定期に「経過年数に応ずる償却費の額」とは、その財産の取得又は建築の時からその年の 12 月 31 日までの期間の償却費の額の合計額となります。
また、償却方法は、定額法によるものとし、耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令に規定する耐用年数によることとされています。
この他にも国税庁から「国外財産調書の提出制度(FAQ)」が公開されていますので、参考にしてみてください。
国外財産調書への記載事項、提出期限は?
国外財産調書には、
- 提出者の氏名、住所又は居所
- 国外財産調書の区分・種類・数量・用途・価額・所在
等を記載することとされています。
国外財産に関する事項については、「種類別」、「用途別」(一般用及び事業用)、「所在別」に記載し、その年の翌年の3月15日までに、住所地等の所轄税務署長に提出しなければなりません。
ちなみに、国外財産調書を提出する方が、「財産及び債務の明細書」も提出する場合、その明細書には、国外財産調書に記載した国外財産に関する事項は記載しなくてもいいとされています。
加算税等の優遇措置・加重措置と罰則規定があります!
この制度は、納税者の国外財産を把握し、我が国での課税漏れを防止することを目的として創設されたと言えます。
しかし、「国外財産調書」自体では直接の納税は発生しないため、国民がどれだけ自主的に「国外財産調書」を提出するのか疑問視されていました。
そのため、国外財産調書制度には、適正な提出を確保するために、加算税の優遇・加重措置、罰則規定が設けられています。
- 国外財産調書の提出がある場合の優遇措置
国外財産に係る所得税等の申告漏れが生じた場合でも、その申告漏れ国外財産について記載されている「国外財産調書」を提出期限内に提出していれば、その国外財産に係る過少申告加算税等が5%減額されます。 - 国外財産調書の提出がない場合等の加重措置
国外財産に係る所得税等の申告漏れ(死亡した方に係るものを除きます。)が生じた場合で、その申告漏れ国外財産について国外財産調書を提出期限内に提出しなかった場合、又は提出期限内に提出された国外財産調書に記載すべき国外財産の記載がない場合(重要な事項の記載が不十分と認められる場合を含む。)には、の国外財産に係る過少申告加算税等が5%加重されます。 - 故意の国外財産調書の不提出等に対する罰則
国外財産調書に偽りの記載をして提出した場合又は国外財産調書を正当な理由がなく提出期限内に提出しなかった場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることがあります。
ただし、提出期限内に提出しなかった場合については情状により、その刑を免除することができることとされています。
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