低額譲受益(譲渡)と贈与税(所得税)



個人(A)から個人(B)へ資産を譲渡する場合、著しく低い価額で取引をした場合には、その財産の時価と支払った対価との差額に相当する金額は、個人(A)から個人(B)への贈与とみなされことがありますので注意が必要です。
<算式> 財産の時価-対価=贈与税の対象となる金額 時価については、次の通りになります。
①上場株式・気配相場等のある株式・・・・・課税時期(取引日)の最終価格
②土地及び土地の上に存する権利並びに・・・課税時期(取引日)の通常の取引価額 家屋及びその附属設備又は構築物
③その他の財産・・・・・・・・・・・・・・通常の相続税評価額 著しく低い価額の判定については、個々の具体的事案に基づき判定することになります。

これは画一的な判定基準を設けることにより、逆に合法的な租税負担の軽減を図ることとなるため、これを防止するために設けられていないのです。
しかしながら、著しく低い価額の対価で取引が行われていても、譲り受けた個人(B)が資力を喪失して債務を弁済することが困難であることから、その弁済に充てるためにその人の扶養義務者個人(A)から譲り受けたものであるときは、その債務を弁済することが困難である部分の金額については、贈与により取得したものとはみなさないことになっています。
たとえば、

<ケースA> 父(A)は、通常の取引価額3000万円の土地を1000万円で子(B)に譲渡したが、Bの資力を喪失し、債務超過1500万円である場合 3000万円(財産の時価)-1000万円(対価)-1500万円(債務超過)=500万円 ∴贈与税の対象となる金額500万円

<ケースB> 父(A)は、通常の取引価額3000万円の土地を1000万円で子(B)に譲渡したが、Bの資力を喪失し、債務超過2500万円である場合 3000万円(財産の時価)-1000万円(対価)-2500万円(債務超過)=△500万円<0 ∴贈与税の対象となる金額0円 となります。

資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合とは、その者の債務の金額が積極財産の価額を超えるときのように社会通念上債務の支払が不能(破産手続開始の原因となる程度に至らないものを含む。)と認められる場合をいうものであり、この場合の債務には公租公課が含まれています。
ちなみに、資産を譲渡した個人(A)は、譲渡所得として確定申告を行うことになりますが、個人が個人に時価の2分の1に満たない金額により譲渡した場合において、その対価の額がその資産の取得費及び譲渡費用の額の合計額に満たないときは、その不足額がなかったものとされ内部通算(損益の相殺)ができないことになります。
たとえば、父(A)は、通常の取引価額3000万円の土地を1000万円で子(B)に譲渡し、土地の取得費と譲渡費用の合計が2000万円である場合 1000万円(譲渡対価)-2000万円(土地の取得費と譲渡費用の合計)=△1000万円の譲渡損となり、 他の譲渡所得がある場合は、損益の相殺を行うが、譲渡対価1000万円は通常の取引価額3000万円の2分の1未満であるため、譲渡損△1000万円が0円になることになります。

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