平成28年度税制改正大綱(消費税還付) 高額資産の取得
平成27年12月24日に平成28年度税制改正大綱が閣議決定されましたが、「高額資産を取得した場合における消費税の中小事業者に対する特例措置の適用関係の見直し」について触れてみようと思います。
以前より、主に不動産投資(居住用不動産賃貸業)では、敢えて不動産を購入するときだけ消費税課税事業者となり、消費税の還付を受けるという手法(自動販売機設置スキームなど)がとられてきました。
これを防止するため、平成22年度税制改正で、課税事業者となった後2年以内に調整対象固定資産を取得した場合、その後3年間は免税事業者及び簡易課税適用事業者になることができなくなりました。
この改正により課税売上割合が著しく変動した場合には3年後に消費税の調整をし、実質的に消費税の還付が受けられなくなることとなりましたが、この適用には一定の要件が設定されていたため、その要件を満たさない方法により消費税還付を受けることができていました。
今回の改正で原則課税を適用している課税事業者が高額資産を取得した場合、その後3年間は原則課税が強制され、免税事業者及び簡易課税適用事業者になることができなくなりました。
一見すると何が変わったのかわかりにくいですが、平成22年度改正時の「課税事業者になった後2年以内に取得」という年数制限が撤廃されています。
- 事業者(免税事業者を除く。)が、簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に国内における高額資産(※)の課税仕入れ又は高額資産の保税地域からの引取り(以下「高額資産の仕入れ等」という。)を行った場合には、当該高額資産の仕入れ等の日の属する課税期間から当該課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度及び簡易課税制度は、適用しない。
(※)「高額資産」とは、一取引単位につき、支払対価の額が税抜1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産とする。
- 自ら建設等をした資産については、建設等に要した費用の額が税抜1,000万円以上となった日の属する課税期間から当該建設等が完了した日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間において、上記1の措置を講ずる。
- その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成28年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合について適用する。
ただし、平成27年12月31日までに締結した契約に基づき平成28年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合には、適用しない。
(平成28年度税制改正の大綱より抜粋)
今回の法改正により、消費税還付目的の手法に一層制限がかけられたことになりますが、これに加えて、従来より消費税の納税義務者であっても簡易課税制度の適用について高額資産の購入があったがどうか注意しないといけません。