遺言書
新聞等でご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、政府・与党は「遺言控除」という新制度について検討しています。
簡単にいうと「遺言書を残している方は相続税を少し安くするよ」っていう制度です。
今の段階では、検討中ですので成立した制度ではありませんが、現行の基礎控除である「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に数百万程度上乗せする形で検討されています。
今回はその遺言の種類について触れてみたいと思います。
1.自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者お一人だけでも作ることができる、最も簡単な遺言書です。
遺言者が、自書で遺言の全部を自分で書いて作成し、日付・氏名を自分で記載し、押印をして、遺言者自身で保管・管理するものです。
(自筆とある通り、ワープロやパソコンを使って作成したものは無効となります。)
皆さんがイメージしやすい最も身近な遺言書が、この「自筆証書遺言」ではないでしょうか?
メリット
- 何といっても簡単に作成でき、費用もほとんどかからない。
- 証人をたてる必要が無いので、内容を誰にも知られることがない。
デメリット
- 紛失や偽造変造の危険がある。
- 内容の記載方法に不備がある場合、その遺言が無効となる場合もある。
- 家庭裁判所での検認が必要であり、勝手に開封すると罰金が課せられる。
- 遺言の存在を誰も知らなければ、最悪の場合、遺言書が発見されない恐れがある。
2.公正証書遺言
遺言者と証人2人以上の立会いのもと、公証人役場へ行き、遺言者が口述した内容を公証人が筆記し作成していくものです。
(※公証人にその場で遺言の趣旨を伝えるのが難しいという場合は、あらかじめ公証人に対して書面で遺言の趣旨を伝えることもできます。)
証人についてですが、未成年者や利害関係のからむ人は証人になれません。
なお、民法では次の方は遺言の証人または立会人になれないと定めています。
- 未成年者
- 推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族
- 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び雇い人
利害関係のからむ人は証人になれませんので、ある程度第三者的な立場の人間が証人にならないといけません。
ちなみに、証人となるべき者がいない場合は、公証役場で証人の手配もしてもらえるようです。
自分の回りに証人になる適当な知り合いが見当たらない場合、また証人を頼んで後に気を使いたくない場合などに利用されています。
遺言書の保管については、原本は公証人役場で行われ、遺言者には正本と謄本が交付されます。
メリット
- 紛失や偽造変造の恐れがない。
- 公証人という専門家に作成してもらっていますので、原則として無効となることがない。
- 作成するときに厳しい手続を踏んだ上で、公証人が確認するので、実際に遺言内容を実行する際には、家庭裁判所での検認が不要となる。
- 遺言の趣旨を伝えて、その趣旨を公証人が文面にする為、自分の意思に沿った遺言内容を実現しやすくなる。
デメリット
- 定められた手続を踏まなければならないので、作成の手続が面倒である。
- 証人2人以上立会いのもとでの作成となるので、最低でも公証人と証人には内容が知られる。
- 公証人に支払う手数料など、その他の遺言ではかからない費用がかかる。
この費用は、遺言を残す目的の財産の価額によって変動する。
費用については、岡山公証センターのホームページに掲載されております。
3.秘密証書遺言
秘密証書遺言を作る際は、署名以外は、遺言者の自筆でなくてもよく、代筆・パソコンでも可能です。
最後に、自筆証書遺言と同じように、押印をしますが、遺言の中に日付を記載する必要はありません。
遺言者が署名押印した上で、封じ目に印を押して封印します。
この封印に使う印鑑は、遺言書に押した印鑑と同じものでなくてはなりません。
次に、公証人役場で証人2人以上に封をした遺言書が、提出した人の遺言であることを確認してもらいます。
(とは言っても、公証人等が遺言の中身を見るわけではありません。)
そして、公証人と証人に署名押印してもらいます。
保管は、遺言者がご自身で保管します。
メリット
- 遺言の存在自体は証人に知られることになるが、公正証書遺言のように内容までは知られることはない。
見方を変えれば、遺言がある事自体は明確にしながら、内容を秘密にしておける。 - 自筆証書遺言と異なり、パソコン等で書くことや代筆してもらうことも可能なため、字を書けない者でも作成できる。
デメリット
- 公証人は内容について確認していないため内容に不備があった場合は、遺言が無効となる恐れがある。
- 公正証書遺言とそれほど変わらない手続きが必要になるので、手続きがやや面倒である。
- 若干の費用が発生する。
- 秘密証書遺言を保管するのは、遺言をした方自身の為、自筆証書遺言と同じく遺言が発見されない恐れがある。
- 公証人が内容を確認していないので、家庭裁判所での検認が必要である。
まとめ
遺言を残そうと思われる方は、その目的があると思います。
ですので、効果が不十分な可能性がある自筆証書遺言・秘密証書遺言ではなく、我々、税理士法人としては、より確実な公正証書遺言をお勧めいたします。
最近よく耳にする遺言信託は公正証書遺言ですね。
ちなみに、遺言に従いたくない場合もあるかもしれません。
そんな場合でも、遺言がある場合は、その遺言が遺産分割において優先されます。
(そのための遺言なのですから当たり前ですね。)
しかし、相続人全員の同意があれば、遺言内容と異なった協議が実務的にはできます。
遺言で財産をもらえる受遺者が同意してくれるかがポイントになるわけですね。
また、遺言執行人が指定されている場合は、執行人は相続財産の管理処分について絶対的な権限を持っていますので、あらかじめ遺言執行人の了解を得ておくことも必要になります。
相続に関するお問い合わせは、朝日税理士法人へお気軽にご連絡ください。
各種専門家とともにお力添え致します。