貸借対照表からわかること
「流動比率」をチェックしてみましょう
経営者が把握しなければならない事柄として資金収支がありますが、これを貸借対照表から読み取る方法のひとつとして「流動比率」という指標がよく使われます。
流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
これは、事業活動にともなって発生する資産である流動資産が、主に事業活動にともなって発生する負債である流動負債の何倍あるか、ということを示しています。
流動資産が多いほど、流動負債の支払にあてる資金を確保しやくすなるので、この比率は高い方が望ましいものです。
日本の会社の流動比率の平均は120~130%といわれています。
流動比率が低くなる現実的な原因の多くは、売掛金や受取手形の金額が少ない場合か、短期借入金が大きい場合が多いようです。
売掛金や受取手形が少ない状態になるのは、採算の得られない取引が多いからであり、これを改善するには、販売価格を上昇させるか、仕入れ価格を下げる工夫が必要でしょう。
短期借入金が多い状態になるのは、機械などの設備の購入代金に短期借入金をあてたり、赤字による資金不足を借入金で補ったりしている場合です。
短期借入金は1年以内に返済期限が到来する借入金であり、これが多いと、事業に必要な資金を十分に確保することが難しい状態になります。
そこで、短期借入金を減らすための方法として、長期借入金や増資などによる資金調達を増やしたり、事業での採算を改善したりすることが必要になります。
手元資金が不足するからといって、単純に短期借入金によって資金不足を補うことをしてしまうと、流動比率を低下させることにつながります。
なぜ資金が不足するのかという要因を把握したうえで、適切な資金の調達方法を実践することが大切です。
「固定長期適合率」で長期的な資金収支の安定性がチェックできる
流動比率は、流動的な資金の安定性を測るものですが、固定的な資金の安定性を測る指標として「固定長期適合率」があります。
固定長期適合率(%) = 固定資産 ÷ (固定負債 + 純資産) × 100
これは、長期間にわたって使用される固定資産が、長期間利用できる資金である固定負債と純資産の合計額に対して、どれくらいの割合を占めているかという指標です。
100%以下であれば安定しているといえますが、80%以下となることが理想的です。
固定長期適合率が高い場合は、短期借入金などを固定資産の調達資金にあてている状況になっていると考えることができます。
この状況を改善するためには、長期借入金を増やす、増資をする、不要な固定資産を処分するといった対策を考えるとよいでしょう。
なお、固定長期適合率が高い場合は、同時に流動比率は低い状況なので、流動比率の改善を行うと固定長期適合率も改善されます。
また、固定長期適合率に似た比率に「固定比率」があります。
固定比率(%) = 固定資産 ÷ 純資産 × 100
これは、固定資産を借入に頼らず、株主の出資した資金や内部留保でどれだけまかなっているかを示す指標です。
これも100%以内におさまることが理想ですが、日本の会社ではだいたい160%程度となっているようです。
「自己資本比率」で資金調達の安定性を確認する
流動比率と固定長期適合率によって、流動的資金、固定的資金の安全性を把握することができますが、安定的な資金調達を行うには負債の金額も考慮する必要があります。
会社は、出資や借入などの負債によって資金を調達しますが、いずれも会社の信用力に応じて限度があります。
特に、借入は定められた期間で返済する義務があり、株主からの出資金と比較して安定性が低い資金調達方法です。
そこで、調達している資金のうち、株主から調達している安定性の高い資金がどれくらいの割合を占めているのかを調べておくことが大切です。
それを調べるには「自己資本比率」という指標を使います。
自己資本比率(%) = 純資産 ÷ (負債 + 純資産) × 100 = 純資産 ÷ 資産 × 100
この数値が高い会社ほど健全な会社であるということができます。
日本の中小企業の自己資本比率は、製造業で約25%、流通業で約16%が平均のようですが、30%以上あることが理想といえるでしょう。
経営者の方は、一度ご自身の会社をチェックされてみてはいかがでしょうか。
詳しいご相談は朝日税理士法人までお問い合わせください。