修繕費と資本的支出 ~具体例
修繕費と資本的支出
以前の記事、修繕しても当期の経費にならない?で修繕費と資本的支出についての基本的な考え方を紹介しました。
簡単におさらいすると、①法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち通常の維持管理や毀損した固定資産の原状回復にかかる支出は修繕費、資産の耐久性が増したり価値を増加させる支出は資本的支出となり、②資本的支出に該当する場合は、支出額を直ちに経費とすることはできず、資産計上したうえで減価償却により期間費用としていく、という内容でした。
ただ実際のところ、考え方はわかるとしても個別具体的な事例になると迷うことも多いのではないかと思います。
今回は、簡単な具体例を見てみたいと思います。
具体例1 アパートの壁紙の張り替え費用
アパートを新築した時又は購入した時は、壁紙に係る費用も建物の取得価額に含まれていますので、建物の取得価額を構成して資産計上されることになります。
では、すでに所有しているアパートについて壁紙を張り替えた場合も、建物取得時と同様に資産計上すべきでしょうか?
アパートの壁紙の張り替えは、それにより建物の耐久性を増す、あるいは建物の価値を増加させるものではなく、通常の維持管理又は毀損した建物につき原状回復するための支出に該当しますので、修繕費として処理することになります。
具体例2 蛍光灯から蛍光灯型LEDランプに取り替えた場合の取替費用
事務所の蛍光灯100本を、すべて蛍光灯型LEDランプに取り替えるケースを考えてみます。ただし、建物の天井の照明設備(建物付属設備)についてはとくに工事はおこなわれないものとします。
LEDランプは蛍光灯に比べて消費電力が少ない、寿命が長い、発熱が少ないなどの点で優れており、交換により節電効果や使用可能期間の延長等、多くのメリットが享受できそうです。
そのため、照明設備の価値を高める、又はその耐久性を増すとして資本的支出に該当するのではないか、とも考えられそうですね。
これについて、国税庁の質疑応答事例では、次のような考え方を採っています。
「蛍光灯(又は蛍光灯型LEDランプ)は、照明設備(建物付属設備)がその効用を発揮するための一つの部品であること、さらに、その部品の性能が高まったことイコール建物付属設備として価値や耐久性が増したとまでは言えないと考えられるとして、修繕費として処理することが相当である」と結論付けています。
※あくまで蛍光灯から蛍光灯型LEDランプに取り換えた場合は修繕費になる訳であり、新たにLEDの照明設備(10万円超)を取り付ける場合には資産計上となりますのでご注意ください。
税務上の判断に迷うときは、朝日税理士法人へご相談ください。