特別償却と特別控除、決め手は持ち味 その2
1.特別償却の選択
特別償却のメリットをひとことで言うと、「即効性」です。
設備投資を行ってすぐに、また月数按分の必要なく、普通償却にプラスして償却できます。
ただし、あくまで「早期」償却であり、「課税の繰り延べ」でしかありません。
耐用年数を通じたトータルでの償却費総額のうち、多くの金額を初年度に償却するため、翌期以降は償却費が少なくなってしまいます。
その結果、初年度に減少した納税額が翌期以降に繰り延べられる訳ですが、とくに設備投資資金を借入によって調達している場合に資金負担が重くなってきます。
例えば、翌期以降、毎年100の借入を返済するとします。
償却費が毎期100、利益0の場合は納税0で返済資金100が確保できます。
償却費が毎期0、利益100の場合は納税30が生じるため返済資金が不足します。
特別償却の上記のような特徴から、
・当期、偶発的に多額の利益が発生した
・不安定な業種であり、翌期以降、業績の低迷も予想される
のような場合には、当期の納税によるキャッシュフローを抑えることを優先して特別償却を選択します。
2.特別控除の選択
特別控除のメリットは、「純粋な節税」と言えるでしょうか。
減価償却は耐用年数を通じて通常どおり行うことができるうえ、さらに税額控除を受けられます。
また、普通償却のみであるため毎期の損益には何の影響も与えず、翌期以降に課税を繰り延べることもありません。
ただし、特別控除と比べて「即効性」では劣る点と、例えば法人税の20%という上限があるため、ある程度納税しないと効果が出てこない、という点がデメリットと言えます。
【特別控除の「効果」】
先月のこのテーマのブログで挙げた例では、特別控除による税額控除額は24万円でした。
「24万円」という金額だけ聞くと、特別控除の効果って少ないなあと感じてしまいます。
ですが、この24万円は、あくまで「税額として」これだけ節税できる、という金額です。
どういうことか?
法人税額を24万円減少させるためには、どれだけの費用が必要か、と考えてみます。
法人税率15%として、24万円を15%で割り戻すと160万円となります。
つまり、通常なら160万円のお金を使って初めて可能な24万円の節税が、1円も使わずにできる。
これが特別控除の本当の効果です。
翌期以降の償却に影響を与えないので、
・翌期以降も比較的コンスタントに利益が出ると予想される
という場合は、翌期以降も普通償却による償却費が計上できる税額控除が向いています。
実際にはこれ以外にもさまざまな要素を考慮しなければなりませんが、目先の節税だけに囚われず翌期以降もしっかり検討して選択してください。