相続財産に加算する贈与財産
通常、相続により財産を取得した人が被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受けた財産がある場合、その相続税の課税価格に贈与時の贈与財産の価格が加算されます。
例えば、甲さんが平成28年4月20日に亡くなった場合、平成25年4月20日以降死亡日までの間の贈与が対象になります。
贈与税が課税されたかどうかは関係ありません。加算された贈与財産について納付した贈与税があれば、加算された人の相続税から控除されます。
但し、例外的に加算されない贈与財産があります。
その範囲は以下の通りです。いずれも、教育資金だったり、結婚子育て・資金だったりと、その資金使途が限定されたものです。
項目 | 非課税限度額 | 摘要 |
居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与について、配偶者控除の特例を受けた金額 | 2,000万円まで | 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に行われた贈与 |
直系尊属から贈与を受けた住宅取得資金等のうち、非課税の適用を受けた金額 | 平成27年1月1日から平成31年6月30日までの間に贈与した場合、住宅の種類や住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間により、非課税限度額が異なる。
※1参照 |
平成29年4月から消費税率10%になることを前提とした優遇措置が含まれているため、税率引上げの時期が平成31年10月に先送りされたことに伴い、見直しの可能性がある。 |
直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額 | 1,500万円まで(うち、学校等以外に支払う金銭は500万円) | 1.資金管理契約終了時の残額について、贈与税の課税対象となる(受贈者の死亡の場合には、贈与税は課税しない)。 |
直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額 | 1,000万円まで(うち、結婚に関して支払う金銭は300万円) | 1. 資金管理契約終了時の残額について、贈与税の課税対象となる(受贈者の死亡の場合には、贈与税は課税しない)。
2. 資金管理契約期間中に贈与者が死亡した場合、残額は相続等により取得したものとみなされ、相続税の課税価格に加算される。 |
※1 各年分の非課税限度額は次の表のとおり(平成27年4月1日現在法令等)
ィ.下記ロ以外の場合
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 | 良質な住宅用家屋 | 左記以外の住宅用家屋 |
~平成27年12月 | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成28年1月~平成29年9月 | 1,200万円 | 700万円 |
平成29年10月~平成30年9月 | 1,000万円 | 500万円 |
平成30年10月~平成31年6月 | 800万円 | 300万円 |
ロ.住宅用家屋の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 | 良質な住宅用家屋 | 左記以外の住宅用家屋 |
平成28年10月~平成29年9月 | 3,000万円 | 2,500万円 |
平成29年10月~平成30年9月 | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成30年10月~平成31年6月 | 1,200万円 | 700万円 |
上記のような贈与は資金使途が限定されているため、使い勝手が悪い面がありますが、余命わずかと思われる方であれば、うまく利用できる場合もあります。
また、相続開始前3年以内の贈与財産が相続財産に加算されるのは、あくまで被相続人から相続などにより財産を取得した人ですので、
相続人以外に対する贈与も節税として有効でしょう。
例えば、相続放棄の手続きをして相続財産を全く受取らない人や、通常法定相続人とはならないお孫さん(遺言等による取得財産がないことを前提)については、その加算の対象者になりません。
もちろん、相続税・贈与税トータルで節税になることがベストですので、贈与を行う場合には、まず相続税の試算を行うことが肝要です。
相続・贈与のことなら朝日税理士法人にお気軽にお問い合わせください。
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