その時間外手当の端数処理正しいですか!?
避けては通れぬ時間外手当。
その時間外手当の計算に端数処理の誤解がよく見られるので、今回はその件に関して説明します。
時間外手当の計算
まずは基本的な時間外手当の計算を簡単に説明を致します。
●時間外手当の算出方法
時間給×時間外労働時間×割増率(1.25 ※深夜であれば1.5)
時間給の算出にいろいろ規定があるので注意してください。
【時間給の算出】
- 時給制の場合 = 時給をそのまま時間給とする
- 日給制の場合 = 日給を一日の所定労働時間で割る
- 週給制の場合 = 週給を週における所定労働時間数で割る
(週によって異なる場合は4週間の平均で算出) - 月給制の場合 = 月給を一月における所定労働時間数で割る
(月によって異なる場合は1年における平均で算出)
月給制の場合は、一か月の勤務日数が月によって異なる場合が多いので、1カ月平均は算出する必要があります。
【一カ月平均所定労働時間】
- 年間勤務日数を正確にカウント
365日 ― 休日数(定休日、祝日、お盆・年末年始休暇等) = 勤務日数 - 一日の所定労働時間をかけて、一年間の所定労働時間を算出
勤務日数 × 所定労働時間数 = 年間労働時間数 - 12で割ることによって算出します。
年間労働時間数 ÷ 12 = 一か月平均所定労働時間数
時間外手当の端数処理
それではここから、時間外手当の計算で発生する端数処理について解説していこうと思います。
・労働基準法第24条では、「賃金は、原則として、その全額を労働者に支払わなければならない。」
同法37条では、「時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して割増賃金を支払わなければならないこと」を定めており、毎日の時間外労働時間数については四捨五入や切り捨てはできません。
例えば、毎日の時間外労働を30分単位で端数処理し、更に1か月の合計時間を30分単位で端数処理をする・・結構多いんですよ、この様な計算をされている方。
では、どのように端数処理を行えば良いのでしょう・・?
《時間計算》
1.1か月における時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること
《賃金額》
2.1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること
3.1か月における時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、2と同様に処理すること
上記の計算方法は通達で示されており、法律違反とはなりません。
また、労働基準法24条全額払いの原則(賃金はその全額を支払わなければならない)に関しては、以下のような通達もあります。
遅刻の場合の賃金カット
遅刻、早退の場合に5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットをするという処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカットについて、賃金の全額払いの原則に反し、違法となる。
ただしそのような取り扱いを就業規則に定める「減給の制裁」をして、労基法91条の制限内で行う場合は、全額払いの原則には反しない。
◇1か月の賃金支払額における全額払いに反しない端数処理
1.1か月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと
2.1か月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと
昨今は未払い賃金で企業が訴えられる案件も増加しています。
また、端数処理が間違えば、保険料、所得税にも影響がでる場合も考えられます。
給与計算は慎重に行い、正しい給与計算を行っているかどうか、今一度、ご確認くださいね。