生前贈与による相続税の節税
基礎控除の4割カットによる相続税の増税は、前回「相続税の基礎控除引下げと課税対象者の拡大」でご案内した通りです。
「110万円までの贈与は、税金0円!」って何となく聞いたことありますよね。
これは、贈与税の基礎控除が110万円となっているからです。
例えば、親が310万円を子どもに贈与した場合は・・・
(310万円-110万円)×10%=20万円
という計算式で贈与税は計算されるんです。
つまり、110万円以内であれば贈与税は0円ってことになりますね。
今回は、この生前贈与を活用した相続税の節税について、効果的ないくつかの方法を簡単に説明したいと思います。
1.早い時期から長期間にわたって贈与する
贈与税は1月1日から12月31日までの贈与の合計額に対して課税されますでの、例えば10年間毎年110万円づつ贈与したなら、
合計で1,100万円の基礎控除を活用し、贈与税を払わずに次世代に移転できたことになります。
2.一代飛ばしの贈与をする
原則、相続により財産を取得した人は、相続税を納める必要があります。
相続のとき財産を取得しない孫に対して贈与しておけば、一代飛ばしで財産の移転をすることになるため、相続税の課税回数を減らすことができます。
ただし、相続により財産を取得する孫が、相続開始前3年以内に贈与を受けた財産がある場合には、その贈与した財産を相続財産に加算して、相続税を計算することになりますのでご注意ください。(生前贈与加算って言われるものです!)
3.多くの人へ贈与する
贈与税の基礎控除の枠内での贈与は、もらう人ごとに年110万円が限度ですので、10年間贈与しても1,100万円としかなりません。
もらう人の数を増やせば移転できる財産も増えます。
4.多くの財産を贈与することを検討する。
多くの財産を移転させることで相続財産を減らすことができます。
ただし、一度に多くの財産を贈与すると贈与税の負担が重くなります。
そのため、相続税の負担額と贈与税の負担額とを比較して、贈与を検討することが重要です。
例えば、相続税の税率が15%の人であれば、贈与税の最低税率10%を活用して贈与税を払ってでも贈与しておけば有利ってことになりますね。
生前贈与も何となく110万円ではなく、相続税の補完税である贈与税の税率と相続税の税率の差を効果的に活用することで、より大きな相続税節税へと繋がります。
5.贈与税の非課税枠(特例措置)を有効活用する
贈与税の非課税枠として
・夫婦間の居住用不動産の贈与
・直系尊属から住宅取得等資金の贈与
・直系尊属から教育資金の一括贈与
等の贈与税が非課税となるような特例措置がいくつかあります。
特に、この3つの特例を受けて非課税になった部分については、生前贈与加算の対象となりません。
これらを上手に利用することで、効果的な相続税の節税が可能です。
まずは、ご自身の相続税の税率がどの程度で相続税はどの程度かかるのかを、簡易的でも試算することが重要です。
相続税の基礎控除の引き下げにより、今まで以上に生前贈与の効果は大きくなっています。
先祖代々から受け継いできた財産、ご自身で身を粉にして築き上げた財産、どちらも次の世代に残したい大切な財産です。
上で紹介したような方法を、ご自身にあった形で上手く組み合わせて節税につなげてください。