退職金 ✿ 同年2か所以上から支払われるとき
役員や使用人に退職手当等を支払うとき、その同じ年に、既に他の会社から退職手当等が支払われていることがあります。
2か所以上の会社からでなくても、一つの会社を退職するとき、企業年金基金などから退職手当等とみなされる一時金が支払われる場合、2か所以上からの退職手当等の支払いということになりますので、他の支払者が支払った退職手当等も含めて、源泉徴収税額を計算することになります。
退職手当等の支払を受ける方は・・・
🌸 支払を受ける時までに、支払者に対して「退職所得の受給に関する申告書」を提出
🌸 その年中に他の支払者から支払済の退職手当等がある場合
「退職所得の受給に関する申告書」に支払済の退職手当等の支払者の氏名(名称)、退職手当等の額、源泉徴収された税額、支払年月日及び勤続年数などを記入
・その支払済の退職手当等の「退職所得の源泉徴収票」を添付して提出
(複数の支払者に同時に申告書を提出する場合、申告書にその提出の順位を記載)
源泉徴収税額の算出は?
退職手当等の支払者が、他の支払者から支払われた退職手当等について記載された申告書の提出を受けた場合、源泉徴収税額の算出を次のように行います。
① 支払済の他の退職手当等の額+今回の退職手当等の額 ⇒ 退職所得の収入金額
② 支払済の他の退職手当等の勤続期間と今回の退職手当等の勤続期間のうち最も長い勤続期間⇒勤続年数を算出
最も長い期間と重複していない期間がある場合は、その重複しない期間を最も長い期間に加算して勤続年数を計算
(1年に満たない端数は1年に切り上げ)
③ ②の勤続年数により退職所得控除額を算出
勤続年数 | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
※本年分の退職手当等が前年以前に支払われた退職手当等の勤続期間を通算して計算されている場合や前年以前4年間(確定拠出年金の老齢給付金を受給した年分は前年以前14年間)に他の支払者から支払われた退職手当等がある場合には、本年分の退職手当等の勤続期間と前年以前に支払われた退職手当等の勤続期間とが重複する期間の年数(1年未満の端数は切り捨て)に基づき計算した退職所得控除相当額を控除した残額が退職所得控除額となります。
④(①の退職所得の収入金額-③の退職所得控除額を控除した残額)×2分の1⇒ 課税退職所得金額(千円未満切捨て)を算出
(注)退職手当等の収入金額のうち、役員等としての勤続年数が5年以下の者が、役員等としての勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けたものについては、計算過程で2分の1にしません。
⑤ ④の課税退職所得金額に「退職所得の源泉徴収税額の速算表」を適用し税額を算出(1円未満切り捨て)
⑥ ⑤の税額-他の退職手当等の源泉徴収税額⇒ 今回の退職手当等の源泉徴収税額
👉👉マイナスとなる場合、 受給者本人が確定申告をしてマイナスの金額の還付を受けます !(^^)!
源泉徴収税額の計算例
では、具体的に源泉徴収税額の計算例を見てみましょう。
朝日さんは、平成29年にA社とB社を退職
A社 就職日:平成20年4月1日 退職日:平成29年3月31日
退職手当支給月:平成29年5月
退職手当支給額:500万円
「受給に関する申告書」を支払者へ提出
B社 就職日:平成22年4月1日 退職日:平成29年7月31日
退職手当支給月:平成29年9月
退職手当支給額:300万円
「受給に関する申告書」を支払者へ提出(A社から支払われた退職手当について記入)
A社から交付を受ける退職所得の源泉徴収票を添付
👉A社では
朝日さんにとって、その年最初の退職手当の受給となるので、A社は以下のとおり勤続年数(就職日から退職日)を計算し退職所得控除額を計算した上で、源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を計算します。
1、 勤続年数の計算
平成20年4月1日から平成29年3月31日で、9年となります。
2、 退職所得控除額の計算
退職所得控除額 40万円×9年=360万円
3、 課税退職所得金額の計算
(退職手当支給額-退職所得控除額)×2分の1
(500万円-360万円)×1/2=70万円 (千円未満の端数切り捨て)
4、 源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額の計算
退職所得の源泉徴収税額の速算表の税額欄の算式に従い源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を求めます。
70万円×5%×102.1%=35,735円 ( 1円未満の端数切り捨て)
👉B社では
朝日さんにとって、その年2か所目の退職手当の受給となりますので、B社では既に支払を受けたA社からの退職手当も含めて源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を計算します。
1、 勤続年数の計算
最も長い勤続期間はA社ですので、A社の勤続期間にA社と重複しないB社の勤続期間を加算します。これは、甲さんの最も古い就職の日から今回の退職の日までの期間と同じになりますので、最も古いA社の就職の日平成20年4月1日からB社の退職の日平成29年7月31日までの9年4か月となります。1年未満の端数は1年に切り上げ、勤続年数は10年になります。
2、 退職所得控除額の計算
退職所得控除額の表により 40万円×10年=400万円
3、 課税退職所得金額の計算
(A社とB社の退職金の合計金額-上記ロで計算した退職所得控除額)×2分の1
{(500万円+300万円)-400万円}×1/2=200万円 (千円未満の端数切り捨て)
4、 源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額の計算
上記ハで求めた課税退職所得金額に応じて、退職所得の源泉徴収税額の速算表の税額欄の算式に従い所得税及び復興特別所得税の額を求めます。
(200万円×10%-97,500)×102.1%=104,652円(1円未満の端数切り捨て)
A社の退職金について源泉徴収された所得税及び復興特別所得税の額を差し引きます。
104,652円-35,735円=68,917円
B社が源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額は、68,917円になります。
ご参考:過去ブログ
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yama