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成年後見制度と税理士の役割



成年後見制度創設の社会的背景及び目的

21世紀に入り、わが国においては少子高齢化が進行し、そのなかでわが国が選択した道は、国民の自己責任を基礎とする国家社会の確立でした。
平成12年4月1日より、国は社会福祉政策を税による直接的な介入から、国民相互の負担による介護保険制度へと転換しました。
これに伴い、福祉サービスの提供は、原則的に行政処分としての「措置」から、利用者とサービス提供者との「契約」によることとなりました。
このような「契約」を基本とする社会にあっては、国民が等しく契約者としての権利行使を可能とするために、判断能力が不十分な者に対する保護が必要不可欠となってきました。

「成年後見制度」とは、認知症の高齢者や知的障害者、精神障害者など、判断能力が不十分な成人の財産管理や契約、福祉サービスの利用契約、遺産分割協議などについて、選任された成年後見人が代理して行う制度のことです。
判断能力に障害を有していても、自己決定能力がないと見なすのではなく、その残存能力と自己決定を尊重しながら、財産保護と自己の意思を反映させた生活を社会的に実現させる、というノーマライゼーションの思想が背景にあります。

禁治産・準禁治産といった旧制度においては、専ら経済取引の安定や家の財産ぼ保全が求められ、本人の権利や利益擁護の観点が希薄でした。
しかし、このような社会福祉政策の転換により、本人の残存能力の活用や自己決定の尊重、そして障害のある者との共生を目指すノーマライゼーションといった新たな理念との調和を基本にし、本人の身上監護及び財産管理の達成を目的とした「成年後見制度」が制定されました。

成年後見制度利用の目的は本人のためであり、成年後見制度の三大理念は、①ノーマライゼーション、②自己決定権の尊重、③身上監護の重視です。

この基本理念に基づき、成年後見人の主な職務として、本人の判断能力に応じて、本人の意思を最大限に尊重し、かつ本人の心身の状況や生活状況に配慮しながら、適正な「財産管理」と、必要な「身上監護」をすることにあるとされています。
成年後見制度は、 判断能力が不十分な方本人のために利用することを目的とするものです。

成年後見制度と税理士の役割

税理士制度においては、税理士法第1条に「税理士の使命」が規定されていて、その使命を達成するには高潔な倫理観と高度な専門性が求められていて、同時にその職能により社会へ貢献することを期待されています。

一方、成年後見制度は、本人の残存能力の活用及び自己決定権の尊重、そして障害者との共生を目指すノーマライゼーションといった、新たな理念との調和を基本としつつ、社会全体が高齢者の保護に取り組むことを求めています。
成年後見人等の業務は、代理権・同意権・取消権の三つの権利行使に立脚しており、その業務に応じて行使権限は異なっており、また任意後見人については契約した範囲の代理権行使を前提としています。

これらの権利行使内容は広範囲にわたると同時に、社会・経済の多様性の中で、その運用に当たっては高度な専門的知識と的確な判断、そして高い倫理性が求められています。
従来のように、成年後見人等及び任意後見人を本人の血縁者に頼ることは、成年後見制度が有効に機能しない原因となっている理由となっています。

税理士は公共的役割を担っており、業務の遂行には高度な専門性と客観的な判断が必要とされるとともに、高潔な倫理観が求められています。
税理士法によりこれらの資質の保持を制度的に義務付けられている税理士が、成年後見制度に参加することは、成年後見制度の目的に資するとともに、より質の高い制度運用が図られる一助になるものと思います。

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